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火山

 昨年秋の御獄山、つい最近の口永良部島に浅間山の噴火と続き、火山のニュースが自然と耳に入ってくるようになりました。北海道の東の端から津軽海峡へ向けて、本州北から南、そして九州の端まで火山は列島の中央を貫いています。火山の上に日本列島が乗っていると言われても何ら不思議がないほど、日本には火山が多いのです。
 十勝も火山ととても深い関係にあります。飛行機から帯広空港に降りてくると、広い大地に緑や黒、黄金色の大きな畑がきれいに並んでいるのが分かります。夏本番を迎えようとしている今の時期は、じゃがいもの白や紫の花が期間限定の花畑を作ります。カロリーベースの食糧自給率が200%にも達する北海道の中で、十勝の畑の面積はその4分の1以上を占めているそうです。10億年も前から積もってできた火山灰土の大地は、作物を育てるのに適しており、十勝を日本有数の農業大国へと導いてきました。
 日本には火山を霊山として信仰する地域が沢山あり、北海道でも「モイワ」や「カムイ」と呼ばれる山がアイヌの人たちの神聖な場として崇められてきました。
 緑に覆われた尾根の向こうは一変、赤茶けた岩肌にざらりと白い硫黄が吹きつけられた谷が見えます。十勝の名を冠した頂は迷いなく天を突き、滑らかに伸びた稜線の先では、絶えず噴煙が上がっています。私たちに恵みと災い、そのどちらももたらすこの山の主は、今は夢うつつの浅い眠りについているところでしょう。少しでも近づいてみたい気持ちと、いつ目覚めるか分からない畏れの気持ちと、美しい姿を眺める度に心を惑わされます。
 火山を故郷にもつ人たちは、何度災いを受けても、いずれはそこへ帰りたいと言います。人は、その大きく不思議な力に、引き寄せられてしまうものなのかもしれません。

2015年06月22日

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