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チゴユリの道

 ユリの花と聞いて、皆さんはどんな花を思い浮かべるでしょう。カサブランカのように白く大きな花でしょうか、それともオニユリのようにオレンジ色の大きな花でしょうか。エゾカンゾウ(ゼンテイカ)のように、湿原に群生する風景が好きな方もいらっしゃるかもしれません。いずれにしても、多くの人にとってユリのイメージは、大きくとても見栄えのする花なのではないかと思います。
 でも、野に咲くユリの花の中には、とてもつつましやかなものが多いことに気づきます。身近なところでも見られるオオアマドコロは、鐘形の白い花が、葉の下に隠れてひっそりと咲いています。上から見ただけでは花が咲いているかどうか分からず、マルハナバチが葉の下に潜り込んでいくのを見つけて覗いてみると、「やっぱり咲いていたか」と分かる次第です。
 先週末、エゾハルゼミの鳴き声がさざ波のように降り注ぐ林の中を歩いていくと、チゴユリの花が道を飾っていました。1センチほどの小さな白い花は、少しうつむき加減に咲いています。前日の雨に濡れ、花びらを開ききれないものもあるほどはかなげですが、時折差し込む木洩れ日を受けて揺れる姿は、ユリの清楚さを失うものではありません。見ているだけで、不思議と辺りの暑さがすっと和らぐような風を感じます。
 これから見頃を迎えるスズランやタケシマランも、名前に"ラン"が付いていますが、実はユリ科の植物です。小さくつつましやかな野の花を見かけると、つい想像してしまうようになりました。「これもユリの仲間かな」と。

2016年05月30日

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今週のヒューエンス
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