水を汲みに
近頃、小さな楽しみが増えました。訪れた先の水汲み場の水を味わうことです。山の上に行けば、いくらでもきれいで美味しい水を飲めそうだと思いきや、火山帯から流れ出る水は口にすることはできず、雪解け水はエキノコックスの問題もあり濾過や加熱をしなければ口にすることはできません。とくとくと溢れる水を、そのまま味わえるということが、実はとても貴重なのです。そして、水分不足になった身体にとっては、どんなものでも満足するかと思いきや、実はそういうときほど水の味を敏感に感じてしまうのです。いつもは気にしていないような微かな味やにおいに気付き、今、身体がほしがっている水ではないと分かってしまいます。しかして、行った先で味わえる天然の水場があれば、とにかく味わってみたくなったわけです。
近頃は、"原始の泉"を利用してみました。原始が原という手つかずの森の恵みです。いつ訪れても、必ず沢山のタンクを携えて地元の人が水を汲みに来ています。そのまま口にしても程よく冷えた水は、身体にどんどんと吸収されていきます。水が合う、合わないという言葉が示すように、昔の人はきっと、その土地ごとの水の味を利き分けることができたのでしょう。水道水に慣れた舌では、今はどんな湧き水もおいしく感じるかもしれませんが、いろいろと味わううちに、本当に自分に合った水を見つけられたり、料理に合った水が分かるようになったりするかもしれない、そんなことを期待しながら、次の水場を密かに探しています。
2016年07月11日
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