分け合う
紫の花はエゾオヤマノエンドウ、白い花は恐らくエゾミヤマツメクサ、そして薄萌葱はエゾハハコヨモギの葉、北海道の固有種の共演です。遠くから眺めると石ころばかりの荒れ地に見える場所も、近づいてみるとこんなに賑やかなお花畑だったりします。そのまま、ワンピースの柄にでもできそうなほど可愛らしい花々です。
豪雪地にありながら雪も留まれないほどの風衝地帯では、養分を蓄える土壌の確保も大変なことです。わずかなチャンスを得て芽を出し、根を伸ばし、何年もかけて花を咲かせるという営みを、気の長くなるような年月をかけて繰り返していくうちに、土壌を抱き込み、風に飛ばされにくいマットが作られていきます。そのマットは、直径数十センチの小島のようであったり、風紋のような波型だったり、そこにどんな風が吹くのかを物語ります。
小さなマット上に咲く花々は、競い合うようでありながらも、太陽の光や土の養分を独占したり、奪い合ったりしているようには見えません。数週間で花を閉じ、主役を次の花へと渡し、冬が来るまで交代で葉を広げ続けます。わずかな資源だからこそ、皆で分け合い、育むことで、大切な場所を守っているように見えます。何だか、今の私たちにとても必要なことのように思えます。
2016年07月25日
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