激しい雨
しばらく前から、7月最後の日曜日は沼ノ原から五色岳を歩きたいと決めていました。湿原に映し出される山並みや、シナノキンバイやエゾノハクサンイチゲのお花畑がどこまでも美しい道は、往復20キロの長い行程にも関わらず、週末ともなれば出発口の駐車場に停めきれなかった車が林道にずらりと並ぶほどファンの多いコースです。今年は雪解けが去年よりも半月以上も遅く、花の開花もなかなか進んでいないようでしたので、一番良い時期をじりじりと待ちながら、逸る気持ちを抑えながら予定を決めた日曜日でした。
でも、今年の北海道のお天気は、なかなか期待通りにはいきません。数日前から停滞していた前線の影響で、午後から激しい降雨と雷の予報が出ていると知り、長丁場が必至の山歩きは断念せざるを得ませんでした。
沼ノ原の出発口へ向かう林道は、途中、高原温泉へ向かう林道と枝分かれします。当初の計画は断念しましたが、温泉には入りたいと思いたち高原温泉へ向かいました。時間はちょうど正午を過ぎた頃。時折、どーんと鈍い雷の音が遠くから響いてきていましたが、雨もぱらぱら程度でした。乳緑色のさわやかな色をした温泉に浸かっていると、雨粒が大きくなり始め、湯上りの温泉卵が空腹に収まった頃には、ザーという音へと変わりました。「向こうの空は明るいのですぐに止むでしょう。気をつけてお帰りください。」と温泉宿のご主人に見送られ、もとの林道を車で戻り始めました。やがて沼ノ原方面へ続く林道と合流すると、目の前を流れる川の様相に目を疑いました。
ほんの2時間前はいつもどおり澄んだ水が流れていた川が、茶色い濁流へと変わり、直径が五十センチはありそうな大きな木が跳ね上がりながら流されていたからです。明らかに水位が林道の高さに迫り、近づけばどんなものでも飲みこんでしまいそうなうなりをあげていました。急いで林道を走り抜けましたが、川は決壊し橋も流されるという現実がすぐ後ろまできているようで、道中恐ろしくてなりませんでした。
今朝の新聞で、沼ノ原方面へ向かう林道で土砂崩れが起きていたことを知りました。10人の登山者の方が孤立してしまっていましたが、今日の午後、無事救出されたと聞き本当に安堵しました。もし、当初の予定を押し通してしまっていたら、と思うととても他人事とは思えませんでした。あの川の恐ろしい流れを目の当たりにして、自然の力は決して甘く見てはいけないという掟を、強く刻んだ週末となりました。
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