夜の境目
日暮れが早くなり、平日はなかなか夕暮れに立ち会うことが難しくなってきました。仕事を終えて外へ出た時には、既に寒々とした夜空が広がっているからです。
日暮れ間際、外出する機会があると、ほんの少し得をした気分です。寒さが深まるほどに透明度を増す空は、青い濃淡をつけて私たちを清浄の中へ包み込みます。太陽の姿が山の陰に隠れてしまった後も、サーモンピンクに染まる雲が浮いています。サーモンピンクが果たしてぴたりと言い現わしているかどうかは分かりませんが、少しオレンジが混じったようなその艶やかな色は、寒空の下に居る私にいつも元気を与えてくれます。そして、ピンクの雲と私の間に低く横たわる雲が、暗い灰色なのを見てふと気付きました。そうか、高い雲にはまだ日の光が当たっていて、低い雲にはもう太陽は当たっていないのだ、と。同じ位置から見えていても、高く浮いた雲はまだ日没前で、低い雲は既に日没後の夜の中なのです。
休日、峠の上から日没を待ってみました。黄金色に染められた美しい針葉樹の森がどんどんと夜の影に覆われていきます。カメラの露出に手間取る間に、もうあんな先へ。太古の人が信じたように、この星が平面でできていたら、昼と夜の境目は室内灯のスイッチを入り切りするような、あっけないものだったでしょう。地球は丸く、そして山があり谷があり、海があり空がある、だから夜の境目もでこぼこに訪れます。当たり前と言えばこんなに当たり前のことはなく、一方で、これほど面白いこともないかもしれない、久しぶりにゆっくりと眺めた冬の夕暮れに、とりとめもない考えが浮かんでは沈んでいきました。
2016年11月21日
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