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力を借りる

 風は強いものの、青空の広がった日曜の午前。氷の塊が流れ始めた札内川を眺めながら、十勝川へ行きました。もうカモメやウミウなど海鳥たちの姿はなく、代わりに、北方から渡ってきた大型の猛禽類が目立ちます。サケの遡上はピークを過ぎてしばらく経っていますが、長い旅をしてきたオオワシやオジロワシにとっては、容易に獲物にありつけるこの浅瀬が、鋭気を養う上でとても貴重な餌場なのでしょう。
 捕まえたサケを引き上げて食べていたオオワシの若鳥をめがけて、どこからともなく、オオワシの成鳥が飛んできました。初めに気づいたのは近くにいたカラスたち。一斉に飛び立ちました。近くにいたオジロワシも警戒の声を上げます。それでも構わず突進してきたオオワシは、若鳥たちを押しのけてあっさりとサケを横取りしてしまいました。

 大きな鉤爪で奪ったサケをしっかりとつかみ、「これは俺のだ」と言わんばかりに仁王立ちする姿に、何と横暴な!と言いたくもなりますが、そこは力が全ての世界です。一度、餌を手放してしまえば、それは自分より力の強い者の手へと当然のごとく渡ってしまうのです。
 そんな鳥たちの動きを眺めながら、でも、と思うのです。オオワシやオジロワシの周りには、いつもカラスが沢山います。つい今しがた、飛んできた大人のオオワシに驚いて逃げたカラスたちも、すぐにまた同じ場所へ集まってきました。しかも、さっきよりも数が増えたような気さえします。サケのおこぼれをもらっているようですが、彼らももしかしたら誰がより強いのかを見分けているのかもしれません。より実力のある者の近くにいれば、より餌にありつける確率が高くなります。さすが頭の良いカラス、と言いたいところですが、同じような組み合わせが、すぐ近くで観察できました。
 白鳥の周りにはカワアイサやマガモが何組も集まります。白鳥は猛禽のように自ら他の鳥を襲うことはありませんが、家族の絆が強いため、子供に近づく敵に対しては激しく攻撃する、とても気の強い一面をもっています。また、狩猟鳥ではないため人間に狙われることもありません。白鳥の近くでは、餌をとることに集中できる、そんな利点を心得ているからこそ、白鳥たちに煩わしそうにつつかれても、そばを離れる事がないのかもしれません。こういう時に使われる、虎の威を借る狐、という言葉はひどく人間的な表現です。自身の力だけではどうにもならない世界でも、どうにかして生き抜こうと身につけた術に、人間の価値観を当てはめるのは、少しおこがましいと、思ったりするのです。
 

2016年12月12日

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今週のヒューエンス
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