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振り返れば

 今年のダイヤモンドダスト初日は、木曜日でした。太陽の光にオレンジ色が残る朝、家を出るとまばゆい光の中できらきらと輝くものがありました。前日に積もった雪が舞っているのかとも思いましたが、それにしては辺りの木々は皆静かで、太陽の正面に立たなければ気付けないほど、光の粒はずっと小さいものでした。これから始まる美しい季節の使者は、まだはかなげではありましたが、家の中でぬくぬくとしていたい気持ちを一気に忘れさせてくれました。
 週末、少し足を延ばして屈斜路湖まで行ってみました。天気は良いけれどもとにかく風が強く、冬将軍は信号待ちの間も車を大きく揺らします。美幌峠に着き、用意してきた限りの防寒対策をして展望台へ向かいます。風に飛ばされそうになりながら、何度も吹溜りに足を取られながら、わずか数十メートルの距離も冬山登山のしんどさです。背中全体に強い風を感じながら、まだ氷結していない屈斜路湖の青さにうっとりし、左奥にそびえる斜里岳の猛々しさに見とれ、ひとしきり写真に収めて身体が冷えきる前に車へ戻ろうと振り向くと、雪に覆われた丘に気づきました。木々の頭は出ているものの大部分は雪に下に埋もれ、その雪も強い風にさらされて煙のように舞い上がりながらどんどんと谷へ流されているのが見えます。雲に隠れていた太陽が顔を出すと、白黒のコントラストはいっそう濃くなり、風の通り道を浮かび上がらせました。なんてすごい世界なんだろう。切るように冷たい風が、絶え間なく頬に当たっているのも忘れるほど、その景色に引き込まれてしまいました。
 冬は寒くて辛いけれど、やっぱり楽しい。実は、夏よりもずっと身近なところに魅力的な風景が広がっていることに気づくと、暖かい室内にこもりっきりになっていてはもったいないと痛感します。

2016年12月19日

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