冬のオアシス
対岸で、カワガラスのペアがそわそわと水の中に潜っては餌を探しています。午後から空が荒れる事を知っているのか、他の鳥たちの声はほとんど聞こえません。今は私たちだけの貸切りです。
冬の間、神の子池へ続く林道は除雪されないため、ここへはスノーシューで20分ほど歩く必要があります。その位ならきっと大した距離ではないだろう、そう楽観的に来てみたものの、雪の道は行けども行けども白く、実際よりずっと遠く感じます。お腹の空きを感じ始めたお昼前、池に到着しました。
新緑から白銀の世界へと、周りの景色は遷り変わっていても、神の子池は凍ることはありません。そこだけ時間が止まったように見えるこの場所は、絶え間なく清らかな水が湧き続けることで、青く美しい水面を保ち続けています。
何が嬉しいか、何よりこんな景色を独り占めできることでしょう。人が沢山訪れる夏の間にはできないことです。誰に気兼ねすることもなく写真を撮っていると、小さな池にも関わらず半周する頃には、スノーシューで温まっていた身体がすっかり冷え切ってしまいました。それなのに、池から溢れ出る小川の底で、梅花藻が夏と同じように青々とした葉をなびかせているのを見つけて、また足が止まってしまいます。砂漠の中にオアシスがあるように、ここは雪と氷の世界のオアシスのようです。降り始めた雪に急かされるように帰り路についても、やっぱりあの青さが心から離れません。
2017年01月23日
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