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後ろ姿

 クチョロ原野線は釧路湿原の北側を横切る未舗装道路です。冬のSL運行は終わり、新緑にもまだ早いこの時期は、観光の谷間期間とでも言うべきか、人に煩わされることもなく、静かな湿原がおだやかに広がっています。
 クチョロ原野線へ入って間もなく、1羽のタンチョウが道路脇で毛づくろいをしていました。驚かせないよう距離を保って車を止め、しばらく様子を見ても、立ち去る気配がありません。こちらの存在には気づいているようですが、タンチョウのすぐ隣にはカーブミラーが立っていて、身だしなみをチェックしている?と思うほど念入りな様子です。ゆっくりと車を近付けていくと、さすがに歩き始めました。でもそっちは、車が向う方・・・。結局、車が後を追うような形になってしまい、嬉しいような苦笑いです。
 それにしても、タンチョウがそろりそろりと長い脚を前へ出して歩く後ろ姿は、まさに貴夫人の名にふさわしく、優雅で、砂利道の風景も何やら絵画のようにも見えてきます。白と黒の地にほんの少しの朱が加わり、決して目立つ色合いではないのに、どんな姿を切り取ってもこんなに魅了される鳥は、きっと他にはいないでしょう。北海道でその姿を見られることが、とても誇らしく感じられる鳥でもあります。
 距離はわずか数メートル先、車を降りても並んで歩けそうな気がしてきますが、きっと、ドアを開けた途端に均衡は崩れてしまうでしょう。今回も車の不思議な力を借りて、いつもより近づくことができた、幸運な日曜日でした。

2017年04月03日

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今週のヒューエンス
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