好奇心いっぱい
雨の日、室内で寒々と過ごすのは少し憂鬱ですが、外へ出かけてみると思いのほか楽しいことに気づきます。若葉の細かな産毛の上には水玉がきらきらと乗り、畑の土も黒々としています。緑を深め始めたカラマツが艶めく景色にうっとりしながら林を抜けると、大きな牧草地が現れました。
なだらかな丘の上で100頭はいるのではないかという数の乳牛が、散らばって牧草をはんでいました。何とも北海道らしいのびやかでゆったりとした景色を写真に収めようと車から降りて歩いていくと、牛たちの配置が変わっていることに気づきました。遠くの方で飼い主らしき人が餌か水かを補充しているのが見えていたので、そこへ皆移動していったのかと思いきや、半分は違っていました。
「もー」という鳴き声とともに、こちらへ走って来るものがいます。有刺鉄線の柵もあるので、大丈夫だろうと思い写真を撮って顔を上げた瞬間には、遠くにいた牛たちもこちらへ向かって走り出していました。何百キロという巨体が、何十頭もどしどしと地響きのような音を立てながら、結構なスピードで駆けて来るのを見て、さすがにこれはまずい!と急いで退散です。
聞けば、後ろから来た牛たちに前へ前へと押されて、柵が壊されるのはよくある話なのだそうです。辺りに人家はなく、どこまでも静かな牧草地帯。私も今回初めて通った道は、もしかしたら車の往来も少ないのかもしれません。「誰?誰が来たの?」そんな好奇心いっぱいの女性の視線を注がれ、冷や汗が出た経験というのもなかなかありません。
2017年06月05日
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