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視線の先

 久しぶりに雲が切れた日高山脈は、思ったとおり端から端まで真っ白でした。少し前までは、山の白も現れたり消えたりを繰り返していましたが、この先、春が再びやってくるまでは、もう雪が消えることはないでしょう。
 冬将軍とともに今年もオオワシが渡ってきていました。今年はサケの遡上数が少ないからか、寒波の到来が早かったからなのか、理由は分かりませんが、いつもの年であれば白鳥やカモやカモメでまだにぎわっているはずの十勝川は、既に閑散としていました。オジロワシの姿も少なく、長旅を終えたばかりであろうオオワシが目立ちます。
 河川敷の通行路から程近い木の上に若鳥が1羽、大きなシルエットを置物のように据えているが見えました。大抵の大型猛禽類は川の向こう岸にとまるので、珍しい光景だと思いながら眺めていると、その視線の先に気付きました。

 枯れた草の枝にスズメの一群です。ざっと60羽を超す数です。スズメがすずなりだ、などと下手な駄洒落が浮かんできてしまうほど沢山です。ワシの視線を知ってか知らずか、スズメたちは陽気に賑わっています。どれだけ力を合わせても、到底、ワシには勝てそうにはありませんが、数の優位は心理的な余裕をもたらすのでしょうか。カモたちならば、私たちには分からないほど遠くを飛んでいるワシに気付いては、警戒の声と同時に逃げ去ってしまうのに、スズメたちは一向におしゃべりが止まりません。若鳥の方も、果たして彼らを狙うつもりだったのか、その真意は分かりませんが、それでも眼光の鋭さにはどきりとさせられます。食物連鎖の頂点に立つ者だからといって、凍てつく季節を生き抜く厳しさの程度は、他の動物たちと何ら変わるものではないでしょう。やはり隙を狙っていたのかもしれません。植物たちが息をひそめた分だけ、動物たちの息づかいが響く季節になりました。

2017年11月27日

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今週のヒューエンス
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