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目が合う瞬間

 冬のキタキツネは美しい、と思います。びっしりと生えた黄金色の冬毛が、どんな寒さにも耐えてみせるという決意を語っているかのようです。
 この日も、出かけた先から帰る途中、白とグレーで塗られた景色の中に、その姿を見つけました。大きな畑のずっとずっと先の方です。車を止めて望遠レンズを覗き込むと、目が合いました。声を発することもなく、身動きをするでもなく、何百メートルも離れた場所からお互いをじっと見合う時間が流れます。しばらくすると、キタキツネはくるりと向きを変え走り出しました。うっすらと背中に雪を積もらせ、振り返りもせず去ってゆく後ろ姿を、なんだか不思議な心地で見送るばかりです。
 時折、野生の動物との間にこうした時間が訪れることがあります。シャッターチャンスを逃すまいとカメラを向けた瞬間、目が合い、射すくめられたようになるのです。動物は人間の感情を感じ取ることができると言いますが、まさに、こちらの心を見透かされているかのような怖さが走る瞬間です。
 でも、夏の彼らからは、目をそらしてしまうことがあります。人が多く訪れる場所で暮らしているキツネたちの中には、餌をもらえることを知っているものもいます。人間からの恩恵を期待して近づいてくる時の目を見ると、いたたまれない気持ちになるのです。どんなに凍てつく冬も乗り切れる彼らの強さをくじけさせてしまうのは、私たちの自分勝手な行動だと気付かされるからです。
 美しい装いを身にまとい、優れた感覚をもち、私たちが到底及ばないような身体能力を備えた野生の生き物たちには、人間なんて意に介さない、そんな風でいてほしい。目が合った瞬間のしびれるような感覚がたまらなく好きな身としては、そう感じてしまいます。

2018年01月09日

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今週のヒューエンス
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