冬になると、北に住む鳥の多くは南へ渡り、また山で暮らすものもほとんどは人里へ下りてきます。夏の間、競うように響いていた彼らのさえずりが消えた冬の山は、想像以上に静かです。
　そんな山の中をドライブ中、川筋を真っ直ぐ飛ぶ影を見つけました。大きな岩の上に止まったかと思ったら、川の中へダイブ。一瞬にして姿を見失い驚いていると、思わぬ方向から飛び出してまた岩の上へ戻ってきます。あまりに動きが早く、姿も黒いので、初めは目の錯覚かと思うほどでした。
　この影の主はカワガラスでした。潜水して水生昆虫を探すのが得意技だそうです。それにしても、水面から露出した岩は氷に覆われ、川岸にはうずたかく雪が層を成しているのにもかかわらず、こんな寒々しい川によく飛び込んでいけるものです。川の中に足を入れている姿を見るだけで、こちらまで身震いしそうです。でも、あちらはあちらでこの静寂をかき乱す私たちの存在が珍しいのか、目障りなのか、こちらを観察しているような素振りもあります。程なく、雪に覆われた川岸の影から、もう一羽が飛び出してきたのを見て、ああ〜、と納得しました。パートナーがすぐ近くにいたのです。雪もちらついてきたことだし、二人の時間を邪魔する無粋はするまいと、この日は退散することにしました。

カテゴリ

今週のヒューエンス

更新日

2018-01-29

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