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真冬のサーフィン

 久しぶりに海の方へ出かけてみたくなり、広尾町のフンベへ向かいました。少し前までは要塞のようにそびえていたであろう不動の氷瀑も、滴る水が光を集め、音を奏で始めていました。目も耳も春の息吹を感じ取っているのですが、頬に当たる風は相変わらず切るように冷たいままです。たまらず車へ戻り、反対側の海を眺め始めました。クロガモやウミウが海へ潜っては浮かんでくる様子を眺めていると、沖の方で見慣れぬ大きな影がぷかぷかと2つ浮いているのに気付きました。「アザラシ・・・??」望遠レンズの焦点を合わせてみると、それは人でした。てっきり漁師さんなのかと思いましたが、どうも様子が違います。
 突然一人が、高さを持ち始めた波の速度に合わせて両手でこぎ始め、白波が生まれ始めるまさにその時に立ち上がったのです。まるで白波の先頭を行くように、ボードは波の斜面でターンを繰り返し、やがて浜辺へと戻ってきました。
 噂には聞いたことがありましたが、長く十勝に住んでいながら、実はここで初めてサーフィンを見たのです。帯広へ引っ越してきたばかりの頃、一度だけ広尾に海水浴に来たことがありましたが、真夏とは思えない海の冷たさに、会は早々にお開きになり、2度目が訪れることはありませんでした。この時に、十勝の海は入って遊ぶところではないという感覚が刷り込まれたと言っても過言ではありません。それなのに、昼間でもまだ氷点下のこの2月に、サーフィンを楽しんでいる人たちがいることに、少なからず衝撃を受けました。
 どれほど寒いのだろうかというありきたりの疑問の後に、広い海を貸しきって楽しむ姿がただ眩しく見えました。そう言えば、2年後の東京オリンピックには、サーフィンが正式種目に加えられたと聞いています。くしくもこの日は平昌オリンピック最終日。十勝や北海道出身の選手たちの活躍に、手に汗握ったり目頭が熱くなったりした2週間が終わってしまう寂しさを感じていたところでした。もしかして、こんな北の海にも、2年後の東京を見据えたアスリートがいるのでしょうか。素人の勝手な妄想ではありますが、でも、こんな真冬に進んで海へ向かうなら、少なくとも根性はピカイチのはずです。

2018年02月26日

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