まだ枯色の湿原が夕日に染まり始める頃、東の空から一組のタンチョウがゆっくりと降り立ちました。その姿は、まばゆい光の中にあっても白さを失わず、まだ冬の眠りから覚めていない平原に、神聖な空気を導き入れます。
　釧路川は雪解け水をたっぷりと集め、溢れそうになりながら湿原の中をうねります。すぐそばの立ち枯れた木の上では、オオワシやオジロワシが置物のようにじっとしていました。かと思うと突然、一点に向かって急降下を始め、草原の中へ消えました。間もなく、カラスたちも辺りを騒がしく飛び始めたので、何か獲物を捕まえたのかもしれません。
　そんな様子にばかり気をとられていると、遠くをカモたちが西へ向かって一直線に飛んで行きました。黄金色の空に、切り絵の様に繊細な黒い影を浮かび上がらせます。
　展望台から眺める景色は、ただ風の音ばかりが聞こえる静かな平原です。でも、ひとたび双眼鏡をのぞくと、そこには鳥たちの園が広がっていました。人の存在が邪魔をしない空間では、驚くほどダイナミックな生き物たちの姿がありました。よく知りたい相手には、どうしても前のめりで近づいていってしまいますが、時には、遠くから引いて見るということも、本当の姿を知るためには必要なのかもしれません。

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今週のヒューエンス

更新日

2018-03-19

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