春の夕暮れ
眩い太陽が山の端に沈むと、空には柔らかな青とピンクが残されました。それを合図にしていたかのように、大地からは無数の声が響き始めます。その声を頼りに、目を凝らして林の向こう見ていると、一筋の影が近づいてきました。
想像しているよりもずっと早く、その影は近づいてきます。そして、一筋に見えた形を緩やかに、しかしダイナミックに変えていきます。集まってみたり、直線に並んでみたり、Vの字になったり。ヒュンヒュンと風切り音を小気味よく響かせながら、ジャンプしたら届きそうに見える高さを、あっという間に東へ向かって飛んでいきます。
始めは白鳥たちが、次いでマガンたち、そして体の小さなカモたちが、順番に頭上を過ぎていきました。特に大きな編隊を組んでやってくるのはマガンたち。先頭を行く者が後続を確認するかのように、声を掛け合っています。大きなグループで飛んできても、多くはペアになって動いていることが、何となく分かります。
皆が同じ東へ向かって飛んでいく中で、1羽だけ逆に飛んでいくマガンがいました。パートナーとはぐれてしまったのでしょう。焦ったように、心配そうに鳴き続けながら群れを逆行していきました。渡りをする鳥たちは、家族との絆がとても強い種が多いと聞きます。陸の上をそして海の上を4000キロも移動し、地球を知り尽くしている彼らが大切にしているものを垣間見て、なんだか胸が熱くなりました。
2018年03月26日
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