三文の徳
久しぶりに早起きをしました。
北海道にしては珍しく、前日の蒸し暑さがまだ尾を引いていて、じとっとした空気がまとわりついていました。一晩中開け放たれていた窓から東の空が見えました。地平線は見えませんが、きっと太陽が顔を出す直前です。雲なのか霧なのかよく分からないほど薄く広がった水蒸気のベールが、一面、赤橙に染まっていました。空全体がメラメラと燃えているかのような赤い景色に、思わず「おお〜っ」と歓声を上げ、急いで用事を済ませて数分後、再び戻って見た時には、空は黄金色に変わってしまっていました。取り立てて用がなければ起きられない早朝の時間、あの一瞬にもう少し足を止めていればよかったと後悔しつつも、情熱的な赤い空は、強烈な印象を残しました。
昼を過ぎた頃から吹きだした風が、重い空気を押しのけてくれ、涼しさが戻ってきました。今度は西の空が赤橙に染まろうという頃、北東へ向かう大きな鳥が見えました。一度の羽ばたきもせず、ただ風に乗って、何の抵抗も受けていないかのようにスルスルと進んでいきます。風が変わったのか、ひらりと方向を変えた瞬間に、真っ白な尾羽が光りました。オジロワシです。多くのオオワシやオジロワシなどの大型猛禽類が、越冬のためここ十勝を訪れますが、そのほとんどは春がやってくる頃には大陸へ戻ってしまいます。北海道で子育てをするオジロワシが、少数ながらいることは知っていましたが、もっと餌も豊富で広い河畔林のある下流の方なのだろうと思っていました。それがこんな身近な空で見られるとは、本当に驚きです。そして、この近くでヒナが巣立っていくのかな、と想像するとまた嬉しくなります。
暑くそして長い一日でした。他の人からすれば、何と言うことのない一日に見えるかもしれませんが、私にとっては三文以上の徳をもらった早起きになりました。
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