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水を求めて

 早朝から雲の無い青空が広がり、暑い一日が始まりました。朝6時の始発のロープーウェイに乗ろうと意気込む人たちの半分は、雲海に浮かぶ山々を期待する観光客たちで、残りの半分は黒岳を起点として大雪山系の山々を縦走しようと意気込む登山客です。つまり、朝一番のロープーウェイが、最も混み合う時間になります。
 黒岳はロープーウェイとリフトを乗り継いで7合目まで行けば、その先は約2キロの道のりです。子供連れの家族や海外からの観光客も気軽に登ることができる反面、実は、なかなかどうして傾斜のきつい道です。この日の最高気温は30度を超す予報が出ていました。背中に当たる日差しの強さも手伝って、あっという間に汗が滴り始めます。8合目が果てしなく遠く感じられ、やがてシナノノキンバイソウやマルバシモツケの花々が斜面を飾るようになり、気持ちは紛れるようになったものの、カメラを構えて立ち止まる度に、汗が吹き出します。
 山の上は大抵、風が強いものですが、この日の空気は私の動きと一緒で、どことなく重くにぶいようです。汗が乾く暇も無く、飲む水の量はどんどんと進み、目的地の北鎮岳に着く頃には、持参した飲み水は既に5分の1の量にまで減っていたから、さあ大変。時刻はお昼前、これからどんどんと気温の上がる時間帯に、途端に不安になります。途中に水を補給する場所は無く、3キロ先の黒岳石室に戻るまで、持たせなければなりません。自然に足の運びが速くなり、景色を堪能したい気持ちも今回ばかりはこらえて、無心で歩きます。幸い、石室に着く頃には、うっすらとガスが立ち込み、涼しい空気が漂い始めました。そして、水を手にすると、肩の荷が下りたように、やっと緊張がとけました。
 いつも水は大切と頭に叩き込んで備えていたつもりでも、いざ手元に残るものが少なくなったときの心細さは想像以上です。備えているつもりではなく、備えなければ何も意味がありません。これは、事の大小に限らず、あらゆることに言えることなのだと、改めて心に刻みました。

2018年07月30日

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今週のヒューエンス
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