星の光
不謹慎だと叱られるかもしれません。でも、ブラックアウトした街の様子を窓から見ながら気付きました。星がものすごくきれいだということを、です。山の上か、よほど街から離れた場所にでも行かなければ見ることができないと思っていた天の川さえ、頭上に淡い光の帯を伸ばしているのがはっきりと分かりました。驚きとともにこみ上げたのは、これは便利な生活と引き換えにしてきた景色なのだということ、そこにあるのに見えていないものが周りには溢れているのかもしれない、と言う思いでした。
自然の力は、決して私たちがすべてを制御しうる力ではないでしょう。しかし、自然を見て自然を知るということは、異変を予測したり、早く察知したり、事前に安全な場所を考える知恵を与えてくれます。冬に雪崩が起きやすい山の斜面には大きな木が生えていませんし、川の水が溢れやすい場所は植生が少し違っていることもあります。近くの山が噴火によって出来たものなのか隆起して出来たものなのかを知れば、どんな土の上に家が建っているのかも分かるかもしれません。自然が歩んできた歴史は、何かしらのヒントとして景色の中に残っているはずです。
不可能を可能にしうる技術には夢がありますし、多くの人の助けとなっていることは間違いありません。今回の災害の現場でも、人の力だけではどうにもならない場面で、技術の力が大いに役立ったことでしょう。そのことを有り難いと思う一方で、街の明かりが星の光を霞ませてしまうように、技術の笠は、自然が伝えようとしている声をかき消してしまっているかもしれません。そのことを、時々思い返さなくてはいけないのだと、満天の星空を見上げながら思いました。
2018年09月10日
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