地球影
水平線にほんのりと現れた地球影。オレンジ色のカクテルの中にゆっくりと注ぎこまれたリキュールのように、静かに青い影を濃くしていきます。わずか十数分の後、水平線の青は再びオレンジ色へと混ざり合って消えていきます。
決して珍しい現象ではありませんが、多くの人が気付かずにいる地球影。初冬の透き通った空に現れた地球の影は、日常の喧騒など別の世界の出来事かのように、太陽の目覚めと眠りを静かに告げます。
山の上で条件がそろうと、真っ白な雲の中に自分の影が映ることがあるのだそうです。眼下に広がる雲に映った飛行機の影、遠くの山に映った自分の影、地球に比べれば小さな小さな存在の影が、大きなカンバスに映っているのを見つけると、なんだかいつも嬉しくなります。水平線までは届かなくても、今ここにいる存在を、どこか遠いところまで知らせることが出来たような、そんな感じです。でも、いつも自分の影は黒です。青い地球の青い影に、やはり憧れてしまいます。
2018年11月12日
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