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白鳥の園

 日曜の朝は、気温がマイナス14℃になる予報が出ていました。いつもならば、暖かい家の中でのんびりと過ごしていたい休日でもありますが、数日前に雪が積もり、この冬一番の冷え込みで天候も晴れとなれば、夜明け前後の景色は間違いなくきれいだろうと想像でき、朝寝坊の日曜日は諦めることに決めました。
 とは言え、来週末に冬至を迎える今の時期は、太陽より早く目覚めるのは難しいことではありません。いつも通りに起きてカメラだけ忘れずに家を出れば、日の出に十分間に合います。目的の場所に着くと、既に川霧が上り始めていました。太陽の光が届き始めると、霧は一層濃く溢れ、また風の流れに乗ってゆらりゆらりと濃淡ができ始めました。その隙間から、白鳥の姿が見え隠れしていました。ひと月前、小型の渡り鳥が集っていた場所は、今は白鳥の園へと変わっていました。カモたちほどは人間に対して警戒心が強くない白鳥は、人を見てあからさまに逃げていくようなことはありません。気持ちよさそうに水を何度もくぐって純白の羽をきれいに整えたり、はばたく仕草で背筋を伸ばしてみたり、くつろいでいるようです。川霧の中から浮かんでは消える白鳥たちのシルエットはあまりに幻想的で、チャイコフスキーもこんな景色を見て白鳥の湖を作曲したのではないだろうかと、思えてきたりします。
 小さな橋の上からしばらくの間眺めていたら、カメラの表面にうっすらと氷の膜が張っていました。足先も指先も頬も感覚がなくなっていましたが、冷えた空気と美しい景色とで心も身体も満たして、これ以上ない一日の始まりになりました。

2018年12月10日

カテゴリ
今週のヒューエンス
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