山の秋
日差しは、夏の盛りに比べるとずっとやわらかくなり、風には、秋の匂いがたっぷりと含まれるようになりました。北に住む者にとって、澄んだ秋の空気は、間違いなくやってくる冬の訪れを強く意識させます。
エゾシマリスは、ハイマツの影でクロウスゴの熟れた実をほおばることにもっぱら集中していました。目の前でじっと観察していている人間のことなどお構いなし。日本産のブルーベリーとも言われるクロウスゴを、私はまだ口にしたことがありません。それを独り占めできる山の住人たちが、ちょっぴりうらやましく思えます。
近頃、袋角(堅い石灰質になる前の角)をもったオス鹿が、道路脇で草を食んでいる姿を何度か見かけました。厳冬期によく見かけるオス達は、ぶつかり合って力比べをしても決して折れなさそうな、堅く立派な角をもっていますが、初秋、まだ柔らかい袋角のオスを見かける機会はほとんどありません。体力のあるオスたちは、暖かい季節は、きっと、森の奥深くで餌を探し回っているのだろうと思っていたくらいです。
5月の末に40℃近くまで気温が上がったせいか、それとも先の冬の寒さが厳しかったからなのか、今年はアジサイの花がほとんど咲きませんでした。花が咲かないということは、つまり、実りがないことを意味します。もしかしたら、山の植物たちにも何かしら影響が出ているのかもしれません。ヒグマの出没が頻発していることも、オス鹿が人里まで下りてきていることも、それを反映してのことなのかもしれません。山に暮らす生き物たちにとって、いつやってきてもおかしくない冬が、これまで以上に厳しいものになるのかもしれないと想像すると、木の実にかじりつくシマリスの姿から、のどかさは感じられなくなります。
2019年09月17日
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