小さな目線
空が高くなったな、と感じるようになりました。実際には、雲が高くなっているからなのでしょう。お陰で、広い十勝の空が、よりいっそう大きく感じられます。
少し前、たまたま見かけた本を、思わず買ってしまいました。それは、木の葉に覆われた枝に、小さな生き物がちょこんと腰掛けた絵が描かれた表紙の本でした。近頃はすっかり縁遠くなっていた児童書でしたが、その絵と堅い装丁の本に、妙に惹かれて手にしました。
物語では、景色や季節の遷り変わりの中、主人公の小さな生き物の暮らしや、人間とのやり取りが描かれていました。自分を高めるための実用書でも、ハラハラするような冒険小説でもありませんが、読んだ後、とても満たされた気持ちになる不思議な本でした。
早朝、チチチ、という鳴き声に気付いて窓の外を見ると、重そうに頭を垂れたヒマワリにシジュウカラが止まり、器用に種を食べていました。その翌日にはハシブトガラもやってきました。秋の風にヒマワリが揺られれば、彼らも一緒に揺れます。冬支度に一生懸命のようでもあり、風と遊んでいるようでもあります。小さな瞳が見つめる世界は、時間の流れも、木洩れ日のまぶしさも、もっと奥行きのあるものなのかもしれません。そんなことを思わせてくれた秋の一冊でした。
2019年09月30日
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