ハクガンの群れ
美しい真一文字の隊列を組んでいるのはハクガンです。白鳥を少し小さく、また首を少し短くしたシルエットで、白鳥とは異なり羽の先が黒く染まっているのが特徴です。
日本では、レッドデータブックの絶滅危惧種IA類に名前が載り、ごく近い将来に絶滅の危険性が極めて高いとされている鳥です。乱獲により、一時は日本での越冬個体は絶滅したとも考えられていましたが、国際的な取り組みにより個体数が増え、昨年の秋には、十勝への飛来数も1,000羽を超えたそうです。
ハクガンは、シジュウカラガンやマガンなどと一緒に渡ってくることがあるそうですが、警戒心が他の鳥たちよりも強いことはすぐにわかりました。人間からは遠いところにしか降りてきません。車であっても、近づこうとすればすぐさま飛び立ってしまいます。かつて、人間に狙われ続けた記憶が、世代を超えて受け継がれているのだろうと思うと、胸が痛くなります。
太陽が傾き始めたころ、数羽ずつ飛び立ったハクガンが、空で白い大きな一群となり東へ向かい始めました。その美しい隊列を追いかけてみたくなりましたが、信号のない真っ直ぐな農道を走らせていっても、みるみる遠ざかってしまいます。青い空に消えてしまいそうな、白く細い糸を、切ないような気持ちで見送りました。
2020年03月30日
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