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世界観

 学生時代、日本の外の世界を見たいという願望はありましたが、なかなかかなうものではありませんでした。でも、時間の融通は利きましたから、わずかな手持ちに気合(根性?)を加えて、代わりに道内の弾丸旅行を決行したものです。最北端の島、礼文島へは、軽自動車に着替えと寝袋を載せて、片道8時間の道のりを友人と二人でひた走りました。そして、周囲70?ほどの小さな島に、こんな美しい場所があるんだと、大きな感動を覚えたものです。
 道内と言えども、礼文島もそうそう行ける場所ではありません。そこで、どうしても花を見に行きたいと思って始めたのが登山でした。行動範囲は半分以下に狭まりましたが、それでもまた、こんな美しい場所があるのかと、またまた感動の連続でした。
 外出自粛が続く中、行動範囲はさらに狭くなりました。朝、ごみを出しに外へ出ると、鳴き声とともに、白鳥の編隊が南へ向かっていくのが見えました。姿は見えなくても、カワラヒワの「チリチリチリ〜」という鈴が転がるような声も聞こえてきます。近所の庭のチューリップも随分大きくなっています。
 日本を飛び出して旅をしたとき、全く違う世界に足を踏み入れるのですから、多くの感動を得られるのは当然のことです。でも、それは身近な場所では感動を得られないということと、決して同義ではありません。住み慣れた景色の中にも、気づかないような小さな脇道があり、見逃してしまいそうな小さな花が足元にあり、海を渡る鳥たちが頭の上を行き交っています。世界を見て回ることだけが、世界観を広げてくれる訳ではないはずです。今は、身近な小宇宙をどれだけ多く見つけられるか、楽しみにしたいと思います。

2020年04月13日

カテゴリ
今週のヒューエンス
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