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コブシの花

 今朝、いつもと1本ずれた道を走ってきたところ、コブシが咲いているのに気づきました。もうそんな時期だったかと、ちょっとした浦島太郎気分です。
 学生だった頃、卒業論文の調査地にしていた山の、見た目よりもずっと急な斜面を一人登っていた時、谷を挟んだ反対側の山に、真っ白な花が満開になっているのに気づきました。早春の茶一色の世界の中、そこだけスポットライトが当たったかのように群れて咲いていた白い花は、ハァハァと肩で息をし、酸欠で今にも遠くなりそうな意識の中にも、強烈な印象を残しました。当時は、オオバナノエンレイソウの群生だと思っていたのですが、後からよく考えてみると、遠くからでもはっきりと分かるあの大きさは、コブシだったのでしょう。
 コブシは、私にとっては難易度の高い被写体の一つでもあります。観察力や表現力が問われるような気がするからです。大きな白い花は、ひらひらと風になびくリボンのように決まった形を留めず、一番魅力的な姿を捕えるのが難しく、また、高い木の枝先に咲く花を狙えば、決まって見上げる角度になり、構図がいつも同じようになってしまいます。過去に撮った写真を見直してみても、見つけられたのは10年も前に撮った一枚だけです。散歩コースにもコブシの木はあったでしょうか。是非とも苦手意識を攻略したい相手だったことを、久しぶりに思い出しました。

2020年04月27日

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今週のヒューエンス
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