待つ
日々、あわただしく過ごしていると、ついつい、気が短くなってしまうことがあります。知りたいと思ったことはすぐに調べられるし、欲しいと思ったものも数日で届くような、デジタルの世界にどっぷりと漬かっていることも、拍車をかけているのかもしれません。でも、動物の世界では、"急ぐ"ということは、本能に組み込まれた生存戦略なのでしょう。敵に遭遇したらいち早く逃げなければなりませんし、誰よりも早く餌を獲得しなければ飢えてしまうからです。そもそも、急ぐことを選択したがために、"動物"となりえたのかもしれません。
でも、植物は全く異なります。"待つ"ことができないと、生き延びることができません。今日は暖かいからと言って急いで芽を出したら、次の朝には霜にあたってしまうかもしれませんし、一輪だけ花を咲かせても、受粉してくれる虫もいなければ、花粉を運ぶ先も見つからず、結果的に子孫を残すことができなくなってしまいます。他に先んじることよりも他と和することを、今この瞬間よりも未来を見据えて適時を待つことを、生存戦略として選んだのが植物です。
だからなのでしょうか、心がざわつく時に、森の緑を見ると心が柔らかくなる気がしますし、光に透ける繊細な花脈は、いつまででも眺めていられます。急ぐことに疲れた時、待つことが得意な友人たちが、癒してくれるのです。風薫る五月も半ば、世の中の喧騒が幻かのように、十勝は緑に包まれています。
2020年05月18日
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