橋の上2020
いつもは見上げるばかりの木の梢も、橋の上では目の高さになることもあります。空中散歩をしているかのような不思議な感覚で、ほんのちょっと楽しいひとときでもあります。
サイクリングの途中、札内川に架かる橋の上で新緑を眺めていたら、ノニレの木の上に偶然鳥の巣を見つけました。細い草木の繊維を細かく編んだ手のひらサイズのまるい形をしています。家主は誰だろうと、しばらく待っていましたが、鳥が戻る気配はなく、一度その場を離れました。
折り返して再び同じ場所を通ったとき、ふっと、生き物の気配を感じたような気がして、急いで自転車を止めました。予感は的中し、小さな鳥が一羽、巣から飛び出してきました。メスのようです。私の存在に気付くと、少し先の枝に止まり、巣へ戻るべきかどうかを思案している様子でした。するとどこからともなくオスが一羽。
お腹の赤い羽は、まさしくベニマシコです。新緑の中の赤はこれまた映えるなぁと、人間の視線が釘づけになっていることなど、彼は気づかぬようで、ホバリングをしながら一心にメスへのアピールを続けています。後で調べてみると、ベニマシコはオスが巣をいくつか作り、メスが気に入った巣を選んで卵を温め始めるとのこと。内見に来てくれた意中の相手を射止められるかどうか、オスにとっては勝負所だったわけです。
図鑑では、ベニマシコは警戒心が強く、じっくり観察するのが難しいと書かれていました。人間に身近な鳥であっても、子育ての季節の親たちは、皆神経をとがらせているはずです。ほどなくその場からは離れましたが、彼の恋が成就したのか、あの巣で子供たちが無事育っていくのか、気になって仕方のない橋の上でした。
2020年05月25日
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