失うこと
旋回噴流撹拌技術の生みの親でもある先生は、私が入社して間もない頃、「流体の世界では、みんなで渡れば怖くない、といった一方向だけの現象は起こりません。右回りの流れがあれば、必ず反対の左回りの流れができ、上に向かう流れがあれば、同時に下向きの流れも生じます。それゆえに、旋回噴流という現象が起こるのです。」と教えてくれました。今となっては、至極当たり前と思える事も、当時、初めて実験用の水槽で旋回噴流を目にしたときは、水表面近くの水の流れと、水槽底部の水の流れが逆向きだということが、本当に不思議で驚きだったのです。
以来、何かを得れば何かを失う、トレードオフの考え方も似ているなと感じるようになりました。得たものの代わりに、失ったものは何だろうかという考えは、いつも頭の片隅にあり、今年に入ってからは、行きたい場所へも自由に行けず、会いたい人にも会えなくなったのは、これまで得たものの代わりに失ったことなのだと、漠然と感じてしまっていました。
でも、そんな日々がもう何か月も続き、おそらくこの先も何年かはこの状態が続くのだろうと実感するようになり、この考え方に少し疲れてきました。得ることも、失うことも、等しく起こりうるのであれば、失ったことの裏には必ず得られたものがあるわけですし、失うことが必ずしもマイナスだとも限らないと思うのです。ならば、得られたもの目線で物事を見つめてみた方が、気持ちはずっと前向きになれます。
これからどんな出会いがあるでしょうか。どんな発見があるでしょうか。私たちの新しい事業年度も始まりました。
2020年09月07日
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