逃した先に
良く晴れた朝は、冷え込むようになりました。カーテンを開けると、地球影を背負った日高山脈が、朝もやに浮いていました。「これは!」とばかりに急いで出かける準備をします。でもそこは霜が降りた朝、寒さ対策にあれやこれやと着込んだ時間がよくなかったのでしょう。道半ばで日の出を迎えてしまい、狙っていた地球影はあっという間に消え去ってしまいました。
不思議なもので、太陽が顔を出した途端、それまで静かに眠っていた朝もやは、一斉に空へ向かい始めます。あきらめきれずに目的の橋までやってきたものの、既に、立ち上る白いもやの中で山々はかすむばかりでした。こんなチャンス、年に何回あるだろうか・・・と、久しぶりに落ち込みました。
でも、橋の反対側は絶景でした。大橋が川霧に浮き、木々の影が墨絵のように折り重なっています。極寒の季節にも似た光景が現れますが、それと比べたら暖かい朝なのですから、ずっと心穏やかに眺めていることができます。他にカメラを構える人もなく、人間があくせくと動き回る街は霧に覆い隠され、高い場所から世界を俯瞰しているような気分です。捨てる神あれば拾う神あり、と思う気持ちが半分、でもやっぱり逃したくなかった、と思う気持ちが半分。善は急げ!身支度の時間こそ戦い!と、心に刻みました。
2020年10月26日
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