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ケサランパサラン

 当社の事務所は1階にありますので、外から人以外の訪問も沢山受けます。一番多いのはもちろん虫たちで、アリやゲジゲジなんかは常連なので慣れたものですが、時には丸々と太ったヨトウムシなんかがやってきて、みんなをぎょっとさせることもあります。先日は、社員の一人がケサランパサランを連れて事務所に入ってきました。きらきらとした真っ白な綿毛の訪問は今年初めてです。なんだか嬉しい客人です。
 実は、このケサランパサランの正体を知ったのは、つい数週間前のことでした。夕刻、川辺を通った時、葉を落としたイタドリの茎にこの綿毛が沢山くっついているのを見つけました。まるでイタドリから生えているようでしたが、よく見ると、巻き付いた別の植物のツルの先に、この綿毛をぎっしり詰め込んだ紡錘形の果実がありました。帰って名前を調べてみると、ガガイモという植物の種であることが分かりました。でも、「ガガイモ」という名前、なんだか見た目との印象が違うなぁ、などと腑に落ちずにいたところ、さらに数日後、たまたま読んでいた記事にこのガガイモの綿毛がケサランパサランの一つと考えられていることを知りました。こちらの名前の方が、ずっと合っている!と、私の中で合点が行き、彼らはケサランパサランと呼ばれることに落ち着いたのです。
 このおまじないのような名前で呼ばれるものは、他にも沢山あるようです。生き物なのかそうでないのか、一体何者なのか、ずっと古くから好奇心の対象になってきたのでしょう。それでいて、見つけた人の心をほんのり軽くしてくれる、不思議な力ももっています。張り詰めるような空気が漂う日々の中にあって、そんな些細な存在こそがありがたいと思えたりします。

2020年11月16日

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