嵐の朝
嵐の前の静けさほど、不気味ものはありません。この冬も、積雪のない期間が長く続いていました。関東以南ならともかく、ここ北海道で雪が積もらないまま春を迎えるなどということは考えられませんから、必ずやってくるだろう嵐は、この長い待ち時間の間に、勢力を溜め込み続けているのではないかと、戦々恐々としていたのです。
その予感が的中したのが先週の水曜日でした。雪の朝は、積もれば積もるほど、静けさが増します。早朝、夜明け前の真っ暗で音のない世界へ出ると、積雪はすでに膝上まできていました。しかも、いつものパウダースノーではなく、少し湿気を含んだ重い雪です。空の色が薄くなっていくにしたがって、風は強くなり、みぞれのような雪が激しく顔に当たるようになりました。一か所から2度3度と雪を運んで、やっと地面が出てくるという具合でしたが、時間が経つにつれてさらに雪は重くなり、どんどんと作業は遅くなり、かれこれ2時間近くも雪かきをしているのに、半径2メートルぐらいの範囲しか進まない状況に、気が遠くなるばかりでした。地面に巣穴をほるアリはこんな気分でしょうか。でも、アリは自分の体重の10倍もの物を運ぶ力があるそうですから、はるかに早く作業が進むことでしょう。道具を使っていても、アリたちより非力な自分に気づかされます。
気力も腕力も燃え尽きそうな頃、反対側から掘り進めていた家族と、やっと、道が通じました。これをもし一人でやっていたら、半日かかっても家から出られなかったかもしれません。協力し合える力って、本当にすごいと感謝です。
さて、さぞや道路は渋滞しているだろうと焦りながら自宅を出ましたが、走っている車は驚くほど少なく、のろのろ運転にも関わらず、遅刻もせずに会社に到着しました。他の社員に聞いても、自宅を出るまでに2~3時間はかかり、場所によっては車が埋まって通行できない通りもあったそうです。そして、翌日からは皆、腕や肩、腰の筋肉痛との戦いになりました。多少のことには慣れているとは言え、もし、こんな嵐が頻繁にやってくるようになったらと想像すると、やはり末恐ろしくなります。
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