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後光が差す

 雪が降るでもなく、雨が降るでもない、久しぶりに曇っただけの週末を迎えて、新聞の天気予報欄を眺めながら、今日は稚内まで行かない限り、晴れは見られなさそうだと悟ります。片道4時間か5時間ぐらいならば、日帰りが許容範囲の北海道民の距離感覚をもってしても、稚内までの片道8時間の道のりは遠すぎます。おとなしく過ごそうと心に決めます。
 太陽がだいぶん西に傾いた頃、澄んだ青空が見え始めました。その範囲は少しずつ広がり、十勝の上空だけぽっかりと穴が開いたようになりました。朝は、おとなしく過ごそうと思っていたはずでしたが、夕日が見られるかなと、淡い期待が浮かんでくると、その足はもう西に向かい始めていました。
 日高山脈は、そのほとんどが雲の中にありましたが、少しだけ山頂の影が見えている山がありました。方角やなだらかにひかれた裾、尖った頂上の形で、すぐに剣山だとわかります。雲がなければ、その左右にも奥にも隙間なく連なっている名だたる山々に埋もれてしまうような山ですが、こんな天気の日には、まるで単独峰のように、標高1200メートルという数字よりも、ずっと大きな存在感をもって現れます。太陽も、剣山の上だけに光のはしごをおろし、まるで後光が差しているかのようです。今日の空は、剣山のためのものだと感じます。
 そこは、雪解けの頃に登れば白い山脈の絶好の展望台となり、初夏に登れば可憐でたくましい花々に励まされる場所でもあります。そんな個人的な思い入れもあるのですが、麓には神社があり、山頂には剣が納められ、厚い信仰を受ける山でもあります。もしかしたら、この週末のような景色を、ずっと昔の人たちも、似たような気持ちで眺めていたからなのでしょうか。ふと、そんな考えが浮かんできました。
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