春を数えて
十勝は随分と雪解けが進みました。「歩道はこんなに広かったか!」と、毎年同じ感慨の言葉とともに、春を実感します。少し北に向かうと、まだ畑にも雪が残っています。融雪剤(炭)の撒かれたところだけ黒々とした大地がのぞいていて、すっかりゼブラ模様です。雪解け水をたっぷりと含んだこの時期の畑に足を踏み入れれば、どんな惨事になるかは大方予想がつきますが、それでも、なんだか、太陽を掲げた丘の上に向かって、全力疾走してみたくなるような、そんな爽快さがあります。(実際には、植物防疫の観点からも、勝手に畑に入ることは絶対にしません。)
道すがら、ふきのとうの若い緑もぽつりぽつりと見えました。我が家のチューリップも、地面が見え始めた時にはもう芽が出ていました。これはもう、春の特権だな、と思います。鳥たちの声が一音調上がって、植物の芽があちらこちらから顔を出して、着なれないスーツに身を包んだ若者が増えて、夜遅くまでビニールハウスの電灯がついて、やがて桜が咲いて・・・。生まれたばかりの赤ちゃんの成長を記録していくように、この季節に起こる小さな出来事は、とても大切な一場面かのように、一つひとつ数えられていくのですから。そして、そのそれぞれが、自分の背中を押してくれているような気にさせるのですから。春の力というのは不思議なものです。
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