程よい距離
黄金色の冬毛を自慢するように、目の前をぽーんっと軽快に飛び跳ねて行きます。カメラのシャッター音が気になるのかもしれません。背を向けて走り出しても、すぐに振り返り、好奇心を奥に秘めたような目を向けます。夏の役割を終えた牧草地の真ん中まで行って止まると、ふさふさのしっぽを、座った足元にくるりと巻きつけて、丸まって眠ってしまいそうな雰囲気です。
人間が得な存在か、損な存在か、まだどちらの色もついていないのかもしれません。何百メートルも離れた先から警戒されて逃げられるのも寂しいものですし、とは言え、餌付けを期待して近寄って来られることも好ましいことではありません。遠過ぎず近過ぎず、お互いの興味を満たすのに、程よい距離感です。
次の瞬間、背筋をぴんと伸ばして、遠くに視線を送りました。何がきっかけになったのか、私にはわかりません。警戒心よりも好奇心が勝っているような振舞から、独立したばかりの若いキツネなのかもしれないと見ていましたが、こういう時の目はやはり鋭いのです。
何事もなかったように、一度はこちらへ向き直りましたが、同時に人間への興味も失ってしまったようです。この後は振り返ることなく、奥の藪へと姿を消しました。
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