眈々と
晴れた日、屋根からぽたぽたと、絶えず雫が落ちてきます。街を覆っていた白い雪の塊が、みるみるとその面積を狭め、その高さを低くしていく様に、もう冬も出口へ向かっているのだと感じます。
霞の中に、山々が淡く影をひいていました。ひときわ尖った頂が、雲に届かんとしています。あれは何という名前の山でしょうか。調べてみても、確信にはたどりつけませんでした。せめて周辺の山にでも登ったことがあれば、分かったのかもしれません。ちょっとため息をつき、でも、すっきりと晴れ渡った空の日は、こんな格好の良い頂も、他の高い山に埋もれてしまって、気にも留まらなかったかもしれないとも思います。霞の粋な演出のおかげで気づくことができました。
さぁ、暖かくなり雪解けが進むと、山に焦がれる気持ちが動き出します。実際には、平地で桜の咲く4月下旬から5月にならないと、南に座した山でも雪は消えません。まだ先は長いのです。これから一か月半、山を見てはうずうずとする気持ちを静めなければなりません。焦がれるものを待つ時間はこうも長いのに、長くあってほしい時間はあっという間に過ぎてしまいます。決して時期を逃すまいと、つい、眈々と時を狙う虎のように、鋭い目つきを山へ向けてしまっているかもしれません。
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