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ぷかぷかと

 霧多布岬に足が向くのは、大抵ワタスゲが見頃の蝦夷梅雨の頃です。いつ行っても、霧多布という名に恥じぬ、真っ白な霧に包まれる頃なので、実は岬の先まで歩くことはあまりありませんでした。でもこの週末はいかにも行楽日和で、久しぶりに先端まで歩いてみようかと思わせてくれるような青空でした。
 なんだか大きなレンズのカメラを抱えた人とすれ違うな〜と思いながら歩いていたら、断崖絶壁の下にスマートフォンのカメラを向けている家族が。真似して覗き込んでみると、一頭のラッコが海の中から浮かんできて餌を食べ始めました。おお〜野生のラッコ!!本物だ!
 浮かんできては餌を食べ、潜って餌を取ってはまた食べて、海鳥ほどではないものの、結構なペースで潜水と食事を繰り返しています。ラッコは大食いだと聞いたことがありますが、まさしくその通りのようです。少し歩いた先で再び覗き込んでみると、いつの間にか二頭に。親子なのか、ぴったりと並んで浮かび、一緒にくるりと一回転してみたり、体を寄せ合って泳いでみたり、うらやましいほどに仲睦まじい様子です。
 岬の先端まで行って戻ってくる頃には、また一頭だけが残されて、今度はぷかぷかと浮かんだまま寝てしまったようです。なんと無防備な昼寝姿・・・などと思っていると、オジロワシが目の前をすーっと横切りました。まさかラッコも狙う?!と一瞬緊張が走ったのは人間ばかりで、当のラッコは相変わらずぷかぷかと寝たまま、オジロワシもゆったりと上昇気流に乗ってどこかへ行ってしまいました。この間には戦いはないのですね。
 子供の頃は、水族館にラッコがいるのは珍しくはないように思っていましたが、今や国内では2ヶ所の施設でしか見ることができないのだそうです。野生でも、水族館と同じようにぷかぷかと浮かんだり毛づくろいしたりする姿は、変わらぬアイドルです。今度は、是非、お腹に赤ちゃんを抱く季節に見に来てみたいですね。
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