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さまよう

 久しぶりに散歩へと出かけます。駆け足に過ぎようとしている秋は、ミズナラやコナラの茶色い葉をこんもりと散策路に落としていました。かさかさと軽快に音を立てながら歩いていると、落ち葉に隠れた路肩に足を取られたりして、そのたびにひやりとします。
 すぐ横の地面からすらりと伸びた細い枝の先に、濃紫の実がなっていました。枝には鋭い棘もあります。棘のある木の実はきっと美味しいのだろう、という根拠のあるようなないような持論があり、何の植物なのか気になって調べてみました。近ごろは、とても便利な機能があり、写真をインターネットで検索すると動植物の種名を割り出してくれたりします。示されたのは「エゾウコギ」。似たような写真も出てきて、なるほどと思いますが、念のため図鑑でも調べてみます。すると、細かな棘があるのはエゾウコギで、扁平な棘がまばらにあるのは「ケヤマウコギ」とのこと。ならば、これはケヤマウコギの方だと分かりました。
 これまで体系的な知識もあてもなく調べる時は、図鑑を最初からひとつひとつ順番に確認していました。すんなりと見つかることはあまりなく、時には図鑑をいくつも広げて見比べることもありました。近ごろは答えがずっと近くなったなぁ、と感心してしまいます。インターネットから提示されたものがずばり正解ではなくても、その周辺まで行ければずっと楽に確信にたどり着けるからです。でも、寄り道が少なくなった分、思いがけない収穫も少なくなってしまったかもしれません。ページをめくった先で、「あそこで見たあの植物(動物)はこの種だったのか!」と、古い記憶に残っていた謎が解けて感動できる機会などは、少なくなった気がします。
 あてもなくさまよっている時に思いがけない感動に出会うのは、森の中を歩くのも、図鑑の中を探し回るのも似たようなものです。一対一で確実につながる感動とは少し違った、一対無限の関係の中にある“縁”にも似た力を感じる時間です。
カテゴリ
今週のヒューエンス
タグ
十勝の景色
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