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吾只知足(出張編)

 出張の間、京都に寄る機会がありました。インバウンドが戻りつつあることは、ニュースでも耳にしていましたが、聞きしに勝る人、人、人!修学旅行シーズンの真っ只中だったことも重なり、想像以上の人混みからはじき出されるように向かった先は、石庭で有名な龍安寺です。
 夏の間登る山の中には、「日本庭園」や「ロックガーデン」と称される場所がいくつかあります。絶妙な岩に苔や花の配置、清らかな水の流れは、本当に自然が生み出した偶然の産物なのかと思うほど美しい場所ですが、地図の中にこの名前を見つけるといつも不思議な気持ちになるのは、卵が先かニワトリが先かの世界に入りそうになるからかもしれません。昔の人たちはそんな景色に憧れを抱いたり、身近にも欲しいと、自然を模して庭園を造ったものと思っていたのですが、名前としては、日本庭園のように美しい場所、つまり美しさの基準を人工物の方に置いて、自然の造形を見ているように感じるからです。山が雪に閉ざされたこの季節、じゃぁ日本庭園はどんなだったかと、改めて見てみたいと思ったのです。
 色づき始めたモミジを見上げながら石庭までやってきて、やっぱり岩の数は全部見えないな~などと、ひと時眺めた後に廊下を曲がると、美しい木漏れ日が苔のじゅうたんに差し込む庭が隣り合っていました。誰が気を止めるでもないその縁側のような場所に腰を下ろしてみると、何だかふ~っと肩の力が抜けるような気がしました。ここなら何時間でも過ごせるかもしれない、そんな気もしました。そんな姿につられたのか、その後、一人旅風情の何人かがこの廊下に座り、ガイドブックを開いて思い思いに過ごしていました。
 よく手入れされた廊下からはぬくもりが伝わり、庭からはほどよく湿気を含んだ涼やかな空気が流れ込み、楽しそうな声が響いてきます。なんだかんだと理屈をつけてやってきた場所ではありましたが、ここには、ずっと長い間、人が関わり合っているからこそ感じられる安らぎがあるのだと、改めて知ることができました。
 心を満たしてくれる美しい空間は、誰が造ったか、どちらが先か後かも無いのだと思います。比べることも意味がないのかもしれません。更に廊下を曲がった先には、水戸光圀公が寄進したと言われるつくばいがありました。吾只足ることを知る。全てを見透かされていたかのような言葉を前に、感服です。
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