水の季節
ダイヤモンドダストが舞う朝、その日は何となく浮かれながら外へ出たくなります。もちろん、寒いことは百も承知ですが、きらきらとしたものに惹かれてしまうのは、本能に近いような避けようのない感情なのではないかと、個人的には思うのです。
いつもの橋へ向かえば、きっと川霧も相当な迫力で立ち昇って見ごたえがあるはずですが、こんな日は、何の変哲も無い静かな山影も、驚くような景色を作り上げていることがあります。枯れた草が一面氷の化粧をし、日が差せば氷の粒ひとつひとつが光を反射してまばゆく輝きます。もう一度命が吹き込まれたかのように、もしかしたらみずみずしい初夏の花の頃よりもずっと存在感を増して、スポットライト浴びる舞台を再び作り出しているのですから、本当に驚きます。
冬は、姿を変えていく“水”につくづく魅了される季節です。ダイヤモンドダストに霧氷、雪の結晶にフロストフラワー、ジュエリーアイスやアイスバブル、氷瀑やキノコ氷も。気象に関わるものも含めると、数はもっと増えそうです。ここでは寒ければ寒いほど楽しみが増えていくなんてことは、引っ越して来たばかりで、木が凍裂する音の正体が分からずにおびえていた頃には、想像もしていなかったな~と、可笑しくもしみじみ思います。